『フリムンシスターズ』

昨年の『キレイ』以来のシアターコクーン。開演前、客席を回る係員さんがにこやかに、マスクの上をつまんで持ち上げるような仕草で「鼻しまってくださいね」と伝えているらしき姿を見て心強く思う。松尾スズキ芸術監督就任後初の新作公演です。就任時のコメントを、一言一句は覚えていないのだけれども漠然と、観たあと思い出しました。
歌う演劇の圧倒的な華やかさを正面から、メッセージもド正面から、ズドンとうちこむような作品だったと思う。理由は人の数だけあって、だけど属性を憎悪することの虚しさは揺るがない。両方が繰り返し強調されるような感覚があった。フラットな世界で戦っている訳ではないんだよと何度も実感する。終盤のあの、コントに出てくるみたいな、下手すりゃ笑いごとみたいなでかい石がデーンて落ちてくるシーン、絵に描いたような絶望のデジャヴだった。爽快で悲しい。演劇を観ているなあと思う。全てを解決して歌うのもいいけど、解決しなくても歌っていい。歌唱力はバキバキに磨かれている感があって、阿部サダヲの歌声もパンクバンドのそれとは一線を画していた。踊る姿は余裕と気概が指の先まで詰まっているかのよう。秋山菜津子のみつ子のコンビニシーンは全般とてもよくて、今後もいろんな人にやってほしい。みつ子コンビニシーン選手権を開催したい。あれでブーストされて怒涛の一幕ラストに一気に駆け込んでいける。ちひろもよかったな。なかなかの状況にあるヒロインだけど、長澤まさみの気質みたいなものが軽やかにすくい投げてくれた。どこかの動画配信サービスで松尾スズキ作の連続ドラマ作ってくれないかなあ。連載小説でもいいけど。数週間とか色濃く引きずられ続けたい。