いだてん

ミスターオリムピックにして夢見るカリスマジジイ、嘉納治五郎先生とのお別れ。「夢見るジジイじゃいられない」と田畑は言ったけど結局最初から最後まで一貫してドリーミングボーイだった。いつも未来が面白いと信じてて、止まることも疲れることも借金返すこともやってらんない。ラジオで河野の言葉を聞いて新聞社に乗り込んできた四三、「オリンピックは来ないのか」と問うその瞳は亡霊を思わせた。自身のピーク時に五輪が消えて、出場叶わなかった選手としての。その精神と対峙した田畑が、自分の中の矛盾を吐き出し、スポーツ愛ゆえの矛盾を飲み込んで即また吐き出した。愛だけは飲み込んだ。否定と肯定が即座に反転するような答え方する彼の癖を見てきたから、彼にしかできない答えだと思える。常に矛盾を孕んでるゴールへの道を行く主人公の。そして嘉納さんとの対峙。初対面のときのただ無礼な口のきき方を思い出しながら見た。膝をつき頭を下げ、そのあとで放った「あんた」の切れ味、田畑の真骨頂が表れていた。あのとき嘉納先生がスタジアムに見た韋駄天も亡霊だろうか。あそこで首を縦に振らず、田畑も副島さんも連れずIOCに行く。それで改めて開催を取り付けてくるというのだから、あまりにも強靭な夢だ。この人を超えてゆかなければならない物語だ。田畑家食卓のシーン、ビタイチふざけない顔して全速力で世界を置いていく夫婦が痛快だった。描かれる様々な瞬間がそれぞれに、この作品の態度を示している。