KERA CROSS『フローズン・ビーチ』

シアタークリエに初めて行く。この作品を初めて観たのは再演で、あのときは紀伊國屋ホールだった。開演前に流れた映像で客席の傾斜への言及があり、椅子に極力浅く腰掛け頭だけ背もたれに当てる、もはや仰向けみたいな姿勢で見るのが後ろの人の邪魔にならなくて良いというナイロン100℃らしいバカ説明があったのをよく覚えている。これからも『フローズン・ビーチ』のこと考えるたび思い出すと思う。
20年前の作品であることがほとんど気にならないどころか、物語の中に漂うイラついた感覚が今の今まざまざと実感もって伝わってくるのに吃驚した。岸田國士戯曲賞受賞時に野田秀樹がコメントで触れていたのはこういうやつのことだったかなと観ながら思って、帰ってから検索して読み返したりしました。頭の奥がキュッと痛むとかモヤモヤに覆われるとか、時に自分を乗っ取ろうとするような強めの苛立ちが人間の中に存在しうるってことが、以前観たときよりリアリティを持っている気がする。忘れないように、という感覚も。忘れねえからなと思わせるような泥水をどこかの段階で啜って、それを餌にする苛々の虫を体内で飼いながら生きていく。市子が暴れる場面が象徴的だけど、愛も頭痛いって呻いていた。思い通りにさせてくれない、誰かのせいの苛立ち。正当か不当かの線は引きづらいし、客観的に引いたとて何か、みたいなとこあるだろう。4人の登場人物は、ナイロン100℃版の静かで時に人間離れした冷ややかな怖さとはまた違った地続きの世界を作り上げていて、そのことも解釈を手伝ったように思う。女優さん4人ともいい声だったな。ブルゾンちえみの市子は、勿論強烈な子ではあるのだけれど、どこか私のクラスにもいたかもという印象で、3幕で家族の話してる姿なんか見ていても、あー私と会っていない間にとんでもない色々があったのちこうやって普通にお喋りしてる同級生いるかもしれないんだなという気持ちになりました。鈴木杏の千津もまた違った手触りがあって、改めてこの人物の危うさをかみしめた。市子が強烈なら千津は猛烈だな。なんだそりゃ。「そうしまショーウインドウ」というどうでもよさ溢れる台詞が残っててよかったです。