パルコ・プロデュース『世界は一人』

岩井秀人と、松尾スズキ松たか子瑛太と、前野健太と。ハイパワー混合戦。チラシにちょっと書いてあった導入もすぐに忘れていて、どんなストーリーなのか想像もつかなかった。
終わり方がとても好みでした。結びつき合う世界の軋みを「お、お前~~~!!」ていうサイズに落とし込んで、クスリとさせながら暗転。この物語の中の人生に描かれた出来事の幾つかは見ているだけで息ができなくなるようなものだけど、舞台の上にはいつもどこかユーモラスな風が吹き込んで少し涙を拭いている。松尾スズキの演じる少年吾郎は動きも気質の表れ方も奇妙に愛らしい。可笑しみを放つ瞬間多々あって、あの日車を降りた一人の帰り道で遭遇した美子に声をかけようとして独特なAVの話と側溝のお父さんの話しか出てこず苦悩するシーンも好き。不器用さとセンスと分別が生きている。吾郎をずっと、嫌いになりたくない。松たか子があのセットに飛び上がった瞬間、歌いだす前から5階に見えた。観ている側の想像力を狙い通りの速さで引き上げている感じ、痛快である。美子と母親を猛スピードで行き交って、これはもう吾郎の頭の中に近いのかもしれないと思う。それぞれの歩んだ実世界と脳内世界、ぜんぶ在って、すべては見せてもらえない。良平側の視点を知らないままの私たちは、なぜ彼が威張ったのか、学校に来なくなったのか、なぜあそこに居たのか、あそこで何があったのか、何も知らないな。前野健太とバンドをいつでも呼び出せた良平、暫くの時間あの場所で愛と過ごした良平、やがて出ていった良平。いやこれ自体昔の歌みたいな話だ。瑛太の歌よかったです。そこら中を埋めるように暗躍する平原テツと菅原永二もいちいち良かったな。時に布団を掴んで、時に色シャツでステップを踏みながら音楽にノッてる平原テツはどういうアレだったのかわかりませんがそこもよかったです。