ほりぶん『飛鳥山』

元号変わって一発目の観劇は王子でほりぶん。今回はチケットがあった。そして当日パンフにあらすじがなかった。
飛鳥山の頂上に実在するお城の形の遊具の前で繰り広げられる、人間と地球の表裏めくるめく物語。あーでもホント面白かったなー。いい話なんだ。盟子ちゃんは中学1年生。小学生の頃にお母さんが失踪して3年、今でもお母さんを探してる。娘思いのお父さんは近所の親切なおばさんと親しくなり始めてる。再会したお母さんは新しい家庭を築いていた。だけど盟子ちゃんは3人で暮らしたかったんだ。いい話なんだ。どの登場人物も健気でやるせない。いじらしく慎ましい。でいて爆弾を抱えてる。ほりぶん初の男性出演者・黒田大輔凄まじかったな。黒田大輔ってあんな人でしたっけ。悪いくすりを盛られたかのよう。或いは化物に憑かれている。或いはゴジラ、或いは猿。鎌田順也という劇薬、生半可が口にすれば四肢爆散であろうことを改めて思い知る。黒田大輔は全身を捧げて打ち勝っていましたよ。もう一度見たいです。川上友里は隠れている(隠れていない)ときの目つきのみで竜を放っている。偽りの本望ダンスは涙なしには見られない。彼女が演じる橋本のおばちゃんはもう歌なのだ。1番と2番があるのだ。この物語でお父さんとお母さんは表と裏を何度も行き交う大人だけれど、橋本のおばちゃんは盟子と同じくらい表裏に生きられない人かもしれない。だって彼女は表現者。あーもう1回見たい。帰ってきた墨井鯨子、ブラジルの水が合うという言葉に何故だか頷いてしまう説得力がある。サンバダンサーもサンバイザーも正しく似合っていた。また見せてほしい。ほりぶんにおける気っ風を体現する女・川口雅子、彼女が操るあの言葉は寧ろ力を封じるためのものだったのではないかしら。若く溢れ出す盟子の才能を正しく制御するための。先輩とはよくも悪くもそういうものかもしれない。物語の悪意に決して汚れないアジアの白虎、何度でも扉を開け閉めして見せてくれ。扉の向こうの黒子の心の叫びまでもが胸をうつ。そして盟子、松竹史桜。少女はこの街・北区を出てゆく。いつものように全員の体内爆弾が鳴り果てた暗転の先で、鎖に固められた扉を30年後の彼女が何も知らずただ何度も開こうとする姿を私たちは見る。悲しさはもう微塵もなく、ただ温かい気持ちになるのです。戦え人生、私が見ている。ほりぶんはいつの間にか大きな優しさを手に入れている気がします。