大人計画30祭 宮藤官九郎と伊勢志摩の感動ドキュメント “伝説の先輩を訪ねて”

30祭開催が決まってすぐ宮藤官九郎が提案したという、元劇団員に会いにいく企画。最初に宮藤伊勢の2人が登壇して喋り、映像を見てはまた喋り、という構成でした。V中に登場する現劇団員の中から、この日は阿部サダヲ宮崎吐夢も途中から登壇。前日の上映会アフタートークの言葉少なさ、記憶のなさと対照的に喋る喋る、覚えてる覚えてる*1。昔のことの方がよく覚えてるの何でだろう、変だよねと彼ら自身も言っていた。さて劇団を去った人はここ数年ではおらず、即ち会いに行くのは20年とかそのくらい前にいた人。
1人目の先輩は立石明石。大人計画四天王の一人にして、辞めるとき阿部サダヲのカバンを井の頭公園の池に投げたという逸話を持つ男。今は建築のお仕事に就いている*2。小道具殆ど作ってたとか、宮藤加入前は松尾スズキの台本書きおこしもやってたとか、人間以外の役よく演ってたとか。男前の兄貴肌という今の大人計画には見当たらないタイプの先輩だったそうで、出トチって叱られた宮崎吐夢を飲みに誘ったり、四天王の公演タイトル決めで宮崎宮藤が揉めたとき*3もなだめる側に回ったり、とカバン投げ以外はいいエピソードが多く紹介されていました*4。昔使ってた稽古場で待ち合わせてから一緒に駅前劇場を訪れ、その後かつてファーストキッチンがあった場所で阿部サダヲと合流、珉亭へ。あんかけ焼そばの大皿を真ん中に置いたまま暫く手もつけず4人で話し込んでいました。立石先輩編を見て色々喋ったあとで宮藤官九郎がふと「皆さん大丈夫ですか、面白かったですか」と客席に声をかける。殆どの人にとって知らない人である草創期の劇団員の話、どうなのかと。けど十分面白かった。辞めた経緯の仔細はVでもこの場でも特に語られないし、ほぼ思い出を話してるだけだけど、劇団を去った人と残った人というふたつの立ち位置の両方に、ある種小説を読むときのように少しずつ感情移入してこちらは見ていて。読み応えしかない。それも、1人目と2人目でわりとはっきりタイプの異なる先輩の話を読み比べるので余計である。その2人目は山本密。大人計画退団後、『キレイ』初演でマジシャン役を務めた男。松尾スズキが個人的に雇うバイトとして出てくれと呼び戻してキャスティングしたとの逸話を持つ男である。逸話というか山本密自身がV中でそう言っていた。彼が辞めようとする動きは複数回あったらしく、松尾スズキが何度か慰留していたとは宮崎吐夢の情報。現在はクリーニング屋のお仕事をしている。ただ大人計画を出た後もペンギンプルペイルパイルズに本名で所属した時期あり、ハイレグジーザス岸潤一郎の劇団竹*5に出そうだった時期ありと、2014年あたりまで演劇界隈にいらしたという更なるトムペディア情報。伊勢志摩は会ったときの印象を振り返って「(演劇の世界に戻ってくる感じは)立石さんはもうないなって思ったけど密くんはある」と言っていた。山本密は、多分当時もそうだったんだろうなと思うけど、一色ではない大人計画の面々の中においてもなお染まらない人という印象だった。あと全然喋らない。こちらのVには池津祥子が合流したのだけど*6、後半は女子2人がずっと喋ってて山本先輩ほぼ無言。見たあと壇上で語られたエピソードでも、男子楽屋のノリ*7がどうにも合わず最終的に女子楽屋所属になっていたとか、そういうの聞いてるだけでも居続けるということはなかったのだろうけど、彼もまた特別で貴重な存在だったのだと思う。宮藤官九郎作品でもしばしば中心的な役柄を担っていたのだそうで、どう消化して演っていたのかしらとも思います。個人的には、大人計画を見始めた頃には持っていた、そして最近はあまり持っていなかった、自分が出会う前の歴史を少し知りたく思う感覚が、このイベントでちょっと思い出されました。この日と翌日の2回上映されるドキュメンタリで、2日目のほうは松尾スズキがゲストとのこと。松尾さんこれ見てなんて言うんだろうと今日の4人も言っていた。想像するだけでなんというか震えるような気持ちになる。その答え合わせがなく、ただその頃を4人の現役劇団員が思い出す今日の上映も、代え難く見逃せない空気に満ちていた。その空気を吸ったせいで少し眠れなくなりました。

*1:とりわけ宮崎吐夢はひとつひとつのイベントを細かく覚えていて、トークの中でも随時訂正や補足を行っていた。宮藤「異常だよね」伊勢「トムペディア」と絶大な信頼を寄せられていました。

*2:柄に黒マジックで「大人計画」て書いてあるナグリを今でも持ってて、持ってきてくれた。あとペットボトルも。グループ魂はスリッパですが、四天王はペットボトルでツッコんでいたそうです。

*3:下北沢のファーストキッチンで延々揉めて、阿部サダヲが途中で何も言わずに帰ったというアレ。この話もその場で宮崎吐夢が何を揉めたのか説明してくれて、聞いてた宮藤官九郎が「うわ、今まさに言われてるみたいな気分になった」と天を仰いだ。

*4:この収録がきっかけなのか以前からなのか、宮崎吐夢阿部サダヲも立石先輩と最近飲んだと言ってました。阿部サダヲはこのイベントの楽屋からLINEやら電話やら入れたりして、「『8時だJ』見てるから出れない」てお返事を貰っていました。宮崎吐夢は先日ラジオ出演した際のダメ出しなどいただいたそうです。

*5:厳密にはデンドロカラムスギガンテウス。吐夢ペディアの正確さよ。

*6:登壇はしてません。映像のみ。映像のみと言えば当時の証言者の一人として顔田顔彦が何度か出てきて、見ている最中に誰とは言いませんけど出演者の「は?」とかいう声が会場内に上がっていた。見終えた後も、誰とは言いませんけど「俺が言ったこともう1回話してる」とか指摘の声が上がっていた。顔田先輩凄いな。

*7:チ◯コ見せ合うとか。ていうか何やってんだ男子楽屋。