ほりぶん『荒川さんが来る、来た』

『得て』以来の阿佐ヶ谷アルシェ。開演前、前回はホラーと銘打たれてるが故もあっての緊張感で座っていたけど、今回も舞台上のテーブルやイスを見ているだけで既にスリルを感じていた。だってほりぶんですよ。嵐を待つ夜の気分とそう変わらない。
街の厄介者・荒川さんとは何者か。荒川さんの過去について、作品本編ではほとんど語られない。最初の役者挨拶でのみちょっと語られる。最初の役者挨拶て何。まあそこは置いといて、とにかく語られないのです。だけど猛烈に人の物ではない力を身につけている感があり、一方で猛烈に人間の哀しさを抱いている感もある。ゴジラである。ほりぶん十八番の全力全面対決が長く長く続く間、荒川さん側に味方がいるときもいないときも、荒川さんの孤独な心情に触れてしまう瞬間がある。何か悪魔に魅入られ乗っ取られてしまったようにも見える荒川さん。そちらこそが荒川さん本体であるようにも見える荒川さん。黒くて大きなサングラスの上から時折飛び出す両眉は感情を豊かに伝え、その眉とサングラスの隙間に見える何かに私たちはある予感を抱く。なぜなら最初の役者挨拶でこのあと荒川さんに何が起こるかを聞いているからだ。震えて待つとはこのことか。川上友里は今回も鮮やかに場のイニシアチブを握り大暴れして輝きながら砕け散り、靴を無茶苦茶に履いて玄関から出て行った。口癖の乗りこなしも抜群、大黒柱ぶりもベリーチャーミング。『ニンゲン御破算』も楽しみです。ほりぶん出る女優陣にはいつも賞賛ばかりなのですが、中でも猫背椿の得点力。どの位置からでも決められる大人計画仕込みの強靭さ、この場所でも際立っていました。オチがキレキレに渋く急に上質感ジャッて出て終わるのがまた格好よくて、ここも彼女の外さなさ堪らなかったです。うっとりした。